相続財産清算人とは?法定相続人や特別縁故者などがとるべき対応とは

「亡くなった被相続人の財産を相続放棄したい」
「内縁の関係だけれど、財産分与を受けたい」
そんな時、相続財産を管理してくれるのが相続財産清算人です。
今回は相続財産清算人について、ドリームプランニングの社長がわかりやすく解説します。

著者プロフィール 


ドリームプランニング 高橋

株式会社ドリームプランニング 代表取締役 高橋樹人

法政大学工学部建築学科卒 2020年より同社代表に就任、ニッチな不動産でお馴染みURUHOMEを立ち上げ後、日本全国から不動産の悩みが寄せられる。不動産業界における高すぎる広告費の問題から、利用者と不動産業者のマッチングが適切に行われていない事を問題ととらえ、業界初の不動産業者も利用者も無料で利用できる不動産SNSウチカツ(UCIKATU)を2022年にリリースした。

相続財産清算人とは?

相続財産清算人とは、法定相続人の全員が相続を放棄して、誰も相続人がいない場合などに、被相続人の財産の管理や処分をすることができる人のことです。

また、特別縁故者がいる場合には、財産の一部を特別縁故者や支払うことができます。
相続財産清算人は利害関係人(相続を放棄した人や特別縁故者)や検察官が家庭裁判所へ申し立てることにより、選任されます。

相続放棄をした際に、相続した占有財産の管理は、引き続き元相続人が行う必要があります。
しかし相続財産清算人を選任すれば、管理や処分といった相続財産の管理を任せることが可能です。

相続財産清算人には誰がなる

何らかの事情で相続人がいない場合、相続財産清算人を選任する必要があります。

家庭裁判所へ選任の申し立てを行うと、相続する財産を清算するために、被相続人との関係性や利害関係があるかなどを考慮されます。

相続財産清算人として、弁護士や司法書士などの専門知識を有する人が選ばれる場合がほとんどです。

申立人が指名をすることもできますが、基本的には弁護士や司法書士でないと難しく、申立人との利害関係などを考慮して、最終的な判断は家庭裁判所の判断にゆだねることになります。

相続財産清算人の権限 

相続財産清算人は、財産の保存、管理、処分ができると認められています。

保存行為

相続財産清算人の自らの判断で、相続不動産の保存行為を行うことができます。
保存行為を行う上で、相続家庭裁判所の許可は必要ありません。

たとえば不動産の相続登記を行うなど、相続財産の状態を変えずに、財産を維持・利用することを言います。

管理行為

相続財産清算人が行う管理行為とは、相続する財産の管理と保存を目的としています。例えば不動産(建物)でいえば、相続登記や建物の修繕工事費など。

そして預金での払い戻しや口座の解約などが含まれます。これらの管理行為を行うことに関して、家庭裁判所の許可は必要ありません。

処分行為

処分行為とは、不動産の売却など、相続財産の所有者などを変更する行為のことです。処分行為に関しては家庭裁判所の許可が必要です。

売却予定額が、相場の金額と見合わない場合は、許可が下りません。不動産の売却、墓地の購入や永代供養費の支払い、定期預金の満期前の解約などを行います。

もし処分行為によって重大な損害を出した場合、相続財産清算人が法的な責任を問われる可能性があるため、注意が必要です。

相続財産清算人と相続財産管理人との違い

相続財産清算人とは、相続人に代わって財産を管理・処分をする人を言います。

不動産など被相続人の遺産相続でお困りの場合、相続財産清算人を立てることで、相続した財産を整理できるようになるのです。

2024年4月1日の民法改正より前は、相続財産管理人という名称でした。これが民法改正以降、相続財産管理人は相続財産の管理のみを行うようになります。

相続財産管理人は、一人の相続人が単純承認したときや相続財産清算人がすでに選任されているときなど、相続開始後にいつでも申し立てることが可能です。

相続財産清算人を選任するための要件 

以下の場合、相続財産清算人を選任する必要があります。
(1)相続人がいない場合
(2)相続人全員が相続放棄した場合
(3)債権者が債務の返済を求めている場合
(4)被相続人と特別な関係にあった場合
(5)欠格や排除で相続人がいない場合

法定相続人がいない場合 

法定相続人とは、配偶者や子・両親・直系の祖父母など、民法で定められた被相続人の財産を相続する権限を有します。

ちなみに被相続人の配偶者と血族関係にある人ですので、婚姻によって成り立つ姻族には、相続権がありません。

血族関係を有する法定相続人と、被相続人との続柄は以下の通りです。
・配偶者
・子(子がなくなっている場合は孫による代襲相続)
・親(親がなくなっている場合は祖父母)
・兄弟(兄弟がなくなっている場合は甥と姪)
このように、法定相続人がいない場合は相続財産清算人を選任する必要があります。

相続人全員が相続放棄した場合

法定相続人の全員が相続を放棄した場合、誰かが不動産などを処分しなければなりません
そこで、相続財産清算人の選任を申し立てる必要があります。

債権者が債務を回収してほしい時

被相続人に債務があった場合、相続人が誰もいなければ相続財産清算人を選任することが可能です。

被相続人と特別な関係にあったで財産分与を受けたい場合

下記の例に示すとおり、被相続人と特別な関係にあった方を特別縁故者と呼びます。

被相続人の遺贈などによって、特別縁故者が遺産の一部または全部を相続できる可能性があります(民法第964条)。

そのような場合には、相続財産清算人の選定が必要です。

【特別縁故者の例】
・内縁の夫婦
・親子同然の関係だったが、養子縁組をしていない場合
・被相続人へ献身的な介護や看病をしてきた方
・被相続人と親戚関係であるが、法定相続人ではない方


【遺贈とは】
被相続人の遺言によって、法定相続人以外の者に財産を相続させること。

欠格や廃除で相続人がいないとき

被相続人や被相続人の殺害に加担したなど、相続に関する欠格事由があり、相続人がいない場合などに適用されます。

【欠格とは】被相続人を殺害したり、詐欺や強迫によって被相続人に遺言書を書かせるなどしたため、相続権を失うこと。

【廃除とは】被相続人を生前に虐待するなど、著しい非行があった場合に被相続人が家庭裁判所へ申し立てて、その者の相続権を失わせること。

【注意】ただし欠格・廃除ともに子がいる場合、被相続人の直系卑属に限り代襲相続が認められます(民法第887条2項)。

相続財産清算人の選任申立ができる人

相続財産清算人の選任申し立てができる人は、下記に挙げる被相続人の利害関係人と検察官です。
(1)相続財産の管理人(相続放棄者)
(2)債権者 
(3)特別縁故者 

相続財産の管理人(相続放棄者)

法定相続人が、相続を放棄したからといって「相続財産の管理をしなくてもよい」ということにはなりません。

最後に相続を放棄した相続人には、相続財産清算人が選任されて、その管理が開始するまでの間、自身の財産と同等に保存する必要が生じます(民法第940条)。

債権者

被相続人に対する債権を所有している場合には、相続人へ債権の支払いを求めることができます。
しかし相続人がいない場合や、相続が放棄された場合などは、遺産から債権が支払われることはありません。

債権者が、被相続人からの債権を回収するために、相続財産清算人の選任申し立てを行う必要があります。

特別縁故者

特別縁故者として相続財産を受けるには、相続財産清算人を申し立てて、相続人を探します。
公告期間の終了する3か月以内に家庭裁判所に相続財産分与の審判を申して立てなければなりません。

相続財産清算人が選任されるまでの流れ

ここでは、相続財産清算人が選任されるまでの流れを解説しましょう。
(1)申立てに必要な書類を準備する
(2)家庭裁判所に相続財産清算人の選任を申し立てる
(3)申し立てによる審理と選任が行われる

申立てに必要な書類などを準備する

家庭裁判所への申し立てをするときに必要な書類や費用は次の通りです。

【申し立てに必要な書類】
・家事審判申立書
・戸籍の書類
・印紙や費用
個々の状況により、必要な戸籍の書類や費用が異なりますので、その都度確認が必要です。

家庭裁判所に相続財産清算人の選任を申し立てる

必要な書類を揃えたら、被相続人の最終的な住所地を管轄する家庭裁判所に選任の申し立てを行います。

たとえば神奈川県横浜市中区にお住いの方が亡くなり、被相続人となった場合には「横浜地方・家庭裁判所」への届け出が必要です。

申し立てによる審理と選任が行われる

申込書を提出すると、家庭裁判所の審理と選任が始まります。相続財産等の状況に応じて相続財産清算人を選定すべき状況であるかを調査するのです。

相続財産清算人の選定が必要な状況と判断されたら、相続財産清算人が選任されます。

相続財産清算人の選任に係る費用 

相続財産清算人の選任に係る費用は以下の通りです。

費用の種類と相場

相続財産清算人の選定する際には、予納金を収める必要があります。予納金の中から、費用や報酬がに係る費用が支払われていく仕組みです。

予納金(手続きのための費用)

予納金とは、相続財産清算人の経費や報酬を支払うために、申立人があらかじめ納めておく費用のことです。

一般的に10万~100万円ほど必要だと言われていますが、個別に裁判所が決定します。
この予納金は、相続財産清算人が行う調査費用や報酬の不足に備えて、あらかじめ支払っておくものです。

相続財産清算人の調査経費を予納金で清算し、予納金が余れば申立者に返金されます。
予納金は、申し立てから1か月以内に支払う必要があります。

万が一、予納金が支払われないと、財産相続清算人の選任が行われませんので、注意が必要です。

費用と報酬の支払い

相続財産清算人が必要な費用と報酬を紹介します。

手続きにかかる費用

手続きにかかる費用は以下の通りです。(個別の案件で変動あり)
・印紙…申立書に貼付する800円分の印紙
・郵便切手…郵送等で必要な郵便切手1000円~2000円程度
・官報公告料…5075円
(実際にかかる費用は、その都度確認をお願いします。)

報酬

弁護士や司法書士へ支払う報酬額は、一般的に月額1万円から5万円程度だといわれています。報酬額は個人で設定することができません。

家庭裁判所が管理内容に相応な報酬額を決定します。予納金を支払った場合には、予納金の中から支払う形になっていきます。

費用を負担するのは誰

相続財産管理人に対する費用は、申立人の負担です。
法定相続人がいて、全員が相続放棄した場合、最後に財産放棄をした人が相続財産管理人の申し立てをする必要があります。

選任申立て時のケースとその後の姿

相続財産清算人の申し立てをしたほうが良いケースは次の通りです。
・債権の回収をしておきたい債権者
・相続放棄をした法定相続人が財産管理をしている場合
・財産分与を受けたい特別縁故者

相続財産清算人を選任することにより相続財産が適切に管理・清算され、債権者の債権回収や特別縁故者への財産遺贈、残余財産の国庫帰属がスムーズになります。

相続財産清算人の選任を家庭裁判所へ申し立てても、以下の状況だと却下されてしまうこともあります。

相続財産清算人が却下されるケース

(1)相続人が現れた時
(2)予納金が払えない時
(3)相続する財産が少額だった場合
(4)申し立てをする権限がない場合

相続人が現れた時

相続人がいる場合には、相続財産清算人を選定することはできません。
告知期間を経て、法定相続人などが現れた場合には相続財産清算人の選任申立が却下されます。

予納金が払えない時

相続財産清算人の選任を申し立てると、家庭裁判所から予納金の納付を求められます。
そのまま納付せずにいると、相続財産清算人は選任されません
また、予納金は1か月後以内に納付することが条件となります。

相続財産した財産に預貯金が多くあれば、必要な支払いができるため、予納金は少額もしくは不要になるケースもあります。

相続する財産が少額だった場合

相続する財産が少額だった場合には、相続財産の管理・処分を行う価値がないため、相続財産清算人の選任申し立ては却下される可能性が高いでしょう。

申し立てをする権限がない場合

そもそも法律上の利害関係人でなければ、相続財産清算人の申し立てをすることはできません。
たとえば被相続人から、すでに土地を購入して所有権移転登記が済んでいるとしたら法律上の利害関係人となり、申し立てをする権利があります。
しかし、被相続人が所有する土地を購入したいと考えているだけだとしたら、事実上の利害関係人となるため、相続財産清算人の申し立てをする権限がないということになります。

相続財産で困ったらウチカツ

不動産を相続するということは、土地や建物を引き継げるという利点がありますが、維持管理が難しいという欠点に感じることも多くあります。

相続する当人同士で話し合い、最善の方法を検討することが大切です。

もしも相続財産で困ったことがあれば、不動産SNSウチカツにご相談ください。相続問題に詳しい、多くの不動産会社へ匿名で相談することができます。

ウチカツは、不動産会社とのマッチングサイトなので、気に入った会社へ連絡するまでは、匿名で相談することができます。

日本全国の不動産会社が、あなたの相談に乗るので、相続財産での困りことも解決できますよ。

まとめ

相続財産清算人は、相続財産を清算して必要な支払いや残余分の国庫帰属を円滑化する役割を負っています。

相続人が誰も存在していなかったり、相続人全員が相続放棄したりなどして、誰も相続財産を管理しない状態になったときに選任されるのです。

多くは家庭裁判所の審判によって地域の弁護士が選任されますが、その前段階として各分野のプロに相談するものいいでしょう。

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