人口減少や少子高齢化によって、近年耳にするようになった空き家問題。
我が国は2008年頃をピークに人口が減少しており、2023年以降世帯数は減少に転じると言われています。
空き家はこの1998年からの20年で1.5倍(576万戸→849万戸)になっており、野村総研は2033年には空き家数は2,150万戸、空き家率は30.2%に上昇すると予測しています。
空き家対策特別措置法、相続土地国庫帰属法などの国が行う法整備と別に、京都市では2026年以降「空き家税」を導入することで話題になりました。
そこで今回、空き家問題解決を支援する不動産SNSウチカツが空き家税のご説明と、今後の動向を詳しく解説します。
京都市空き家税と今後の動向を解説!
空き家税(非居住住宅利活用促進税)って何?
今後も空き家数の上昇が予想される中、京都市は全国で初めて条例に基づく法定外税として「空き家税(正式名称:非居住住宅利活用促進税)」を導入します。対象者は空き家、別荘の所有者で、2026年以降に導入が予定されています。
導入に当たっては、総務相の同意が必要になりますが、2023年3月23日、松本剛明総務相が同意を表明する方針を固めたと報じられました。
京都市空き家税の概要
空き家税(非居住住宅利活用促進税)の概要は以下の通りです。
●納税義務者 市街化区域内にある非居住住居所有者
※非居住住宅は、空き家、別荘・セカンドハウスなど「生活の本拠をおいている人がいない住宅です」
※居住者の有無は1棟所有の賃貸アパートなどは棟単位、分譲マンションは区分所有家屋単位で判定
●免税点
固定資産税評価額が20万円未満(制度導入から5年間は100万円)の家屋は課税されません。
●課税免除
一部の非居住住宅については、税が免除されます
●納税猶予
非居住住宅の居住者、または所有者が死亡した場合、最大3年間は住宅の処分、活用を図る期間として、納税が猶予されます。
●税額の計算
1,2を合計して算出
1.家屋価値割 固定資産税評価額(家屋)×税率0.7%
2.立地床面積割 敷地の土地にかかる1㎡当たり固定資産税評価額×家屋床面積×税率
京都市が空き家税を導入した背景
京都市が空き家の課税強化をするのは、空き家所有者に税負担を増やすことで、空き家の活用を増やし、空き家を減らすことが主目的です。しかし、この背景には京都市が直面している「若者・子育て層の市外への流出」という大きな問題があります。
下記の表にあるように、京都市の空き家率は2018年現在12.9%であり、全国平均(13.6%)より低いのですが、若年・子育て層が近隣都市などに流出しており、都市の持続性を脅かす最重要課題であると考えられています。
全国及び政令指定都市の総住宅数・空き家数・空き家率(2018(平成30)年10月1日現在)
出典:京都市統計解析 No.111
以下のグラフは京都市における年代別の社会動態ですが、0~4歳、25~29歳、30~34歳、35~39歳の転出が目立ちます。この表の年齢層を見ても、若年の働き世代・子育て世帯の転出が深刻であることが明らかです。
また、15~19歳、20~24歳では、転入超過となっていますが、これは大学入学による転入、留学生など外国人の転入が要因と言われています。
年代別の社会動態(日本人、外国人の総数)
出典:京都市情報館 資料2「年代別社会動態」(日本人、外国人の総数)
この状況を変えるため、京都市は空き家税導入に取り組んでいます。これによって住宅供給の促進、子育て世代を中心とした居住の促進、空き家の発生抑制などにつなげ、人口抑制や社会的費用の低減につなげようという狙いです。
京都で子育て世代の転出が進む理由
京都府少子化要因実態調査(平成27年3月)によると、京都市域からの転出理由として「住宅事情」を上げている人が33.9%の1位を占めています。
1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | |
男性 | 住宅事情 (33.9%) | 通勤通学の便 (20.4%) | 豊かな自然環境(19.2%) | 就職 (16.7%) | 子どもの学習環境(16.2%) |
女性 | 住宅事情 (30.2%) | 豊かな自然環境(20.8%) | 結婚 (20.2%) | 通勤通学の便 (17.1%) | 子どもの学習環境(12.7%) |
京都市は日本随一の観光都市であり、魅力ある街であると考えられますが、暮らすには適さないのでしょうか?
京都市内中心で家探しが大変な理由として、都心部に近いほど地価が高くなるため予算オーバーになる人のほかに、「京都ブランド」も原因の一つと考えられています。
日本の歴史的な趣を持つ京都は、街の景観などの理由から住宅の高さ規制がかかっています。2007年に始まった「新景観政策」では地区別に10M、12M、15M、20M、25M、31Mと6段階に分けられていて、都心部の幹線道路沿道であれば高さの最高限度が31Mですが、これは20階建て以上(60M)あるとされているタワーマンションの半分ほどの高さでしかありません。また、京町屋が残る旧市街地等は高さの最高限度が15Mとなっています。
また、京都ブランドとしてはほかにも、景観の観点から「テナント募集中」等の張り紙が張られず、結果として活用されずに終わっている空き家も多いという声や、富裕層が別荘として所有していることも特徴です。このような理由から、京都市内は住宅不足に陥っているのです。
京都市の空き家税導入による人々の反応
空き家税導入による人々の反応はさまざまです。「空き家税が空き家再利用へのインセンティブとなる」という市内の空き家所有者の声や、「住宅供給増による家賃の低下に賛同」という意見もあります。
しかし、空き家税の効果を疑う人も少なくありません。「空き家税により手放された住宅は、ホテルや旅館といった観光施設など、市が予想した用途ではない活用利用に至り、結果として市外転出者の手には渡らないのでは」という声もあります。
このほかにも、「富裕層はそのまま税負担を続けるからセカンドハウスを手放さない」「空き家税により売りに出された家は外国人にわたるのでは」という懸念もあります。空き家税が京都市外への転出者の処方箋となるかは、今後の動向に注意する必要がありそうです。
空き家税導入は全国に広がる?!
京都市民以外の方の中にはこう思った方もいるかもしれません。「それって京都市だけの話でしょ」「私たちには関係ない」。しかし本当にそうなのでしょうか?
政府は令和5年3月3日空き家対策特別措置法の改正案を閣議決定しました。決定の内容については後ほどご説明しますが、平成27年に施行された同法では、倒壊の危険があったり、景観や衛生の観点から近隣住民に迷惑を及ぼしている空き家は「特定空き家」に指定し、固定資産税の減額の対象から外したり、行政による強制解体も可能とされています。
しかし、この法律で空き家減少に歯止めがかかっていると言い難く、全国にある居住目的外の空き家が約350万戸(2018年)のうち、「特定空き家」として指定されたのはたったの約4万戸しかありません。
空き家を生み出す固定資産税の減額措置
固定資産税の減額措置とは、200㎡までの住宅用地の固定資産税を1/6(都市計画税は1/3)に、200㎡を超える一般の住宅用地を1/3(都市計画税は2/3)にしたり、耐火・準耐火のマンションなどの建物部分の固定資産税を1/2にしたりする措置です。
よくあるのが、親が亡くなり、その家が空き家になった場合でも、子が親から相続した空き家を保有しながら減税措置を受けるので、空き家をそのままにして、特定空き家を生み出す要因となっていました。
空き家対策特別措置法の改正案は、空き家への増税?
先ほどご説明した令和5年3月3日空き家対策特別措置法の改正案では、最悪な状態である「特定空き家」に至る前の段階で「管理不全空き家」として指定し、「特定空き家」に指定されるまで出来なかった行政による改善の指導・勧告、勧告をした場合の固定資産税を減額する住宅用地特例の適用解除が出来るようになります。
つまり、「管理不全空き家」に指定されると住宅用地特例を解除され、実質的には固定資産税の増税が課されることになります。
こう考えると、京都市の空き家税は他人事ではないといえそうです。
空き家対策の法改正は他にもある
空き家の原因として、相続登記や住所変更登記などがされないままの状態で残っている所有者不明土地がありますが、これらの土地の発生予防と、利用の円滑化を目的として、空き家関連の法改正は他にもあります。
不動産登記法の改正
所有者不明土地の発生を予防するため、相続などにより所有者となった者に、登記を義務化する不動産登記法の改正が令和6年4月1日に施行されます。
これによって、不動産を取得した相続人は、取得したことを知った日から3年以内に相続登記を申請する必要があり、理由なく申告漏れがあった場合は過料の罰則があります。
また、令和8年4月までに施行されるのは、登記名義人が住所変更をした場合、2年以内に住所変更登記をしなくてはならなくなりました。
●令和6年4月1日施行
・相続登記申請の義務化(取得を知った日から3年以内に相続登記申請)
・相続申請登記新設(登記名義人の相続人であることを申し出る制度)
●令和8年4月まで施行
・住所変更日から2年以内に変更登記の義務化
・登記官が死亡等の情報を職権で登記
・所有不動産記録証明制度新設(所有している不動産の一覧を証明書として発行)
相続土地国庫帰属法
相続や遺贈により取得した土地でも、場所によってはなかなか売れないこともあります。そこで、一定の要件を設定し、国庫に帰属する制度が創設、令和5年4月27日に施行されました。
●土地の要件(下記のような費用や労力を要する土地は不可)
・建物や通常の管理又は処分を阻害する工作物等がある土地
・土壌汚染や埋設物がある土地
・危険な崖がある土地
・権利関係に争いがある土地
・担保権等が設定されている土地
・通路など他人によって使用される土地 など
●負担金(10年分の土地管理費相当額の負担)
・森 林 例: 1,500㎡ 約27万円
・田・畑 例: 500㎡ 約72万円
・宅 地 例: 100㎡ 約55万円
・上記以外の土地:面積に関わらず20万円
民法改正
所有者不明土地の管理や、管理不全土地の管理を適切に行うため、改正民法が令和5年4月1日に施行されました。
●財産管理制度
・所有者不明土地の管理に特化した財産管理制度の新設
●共有物利用の円滑化
・裁判所関与のもと、共有物の変更行為、管理行為を可能にしたり、不明共有者の共有持ち分を取得して不動産の共有関係を解消出来る
●長時間経過後の遺産分割見直し
・10年以上経過した遺産は画一的な財産分割を行う仕組みを創設し、遺産分割協議未了を解決する
●ライフライン設備等の規律整備
・ライフラインの引き込みの為に、隣地が所有者不明土地だった場合でも対応できるようにして、引き込みの円滑化をする。
空き家を得意とする不動産屋を探すのは難しい
京都市の空き家税の導入や、今後空き家に対する実質的な増税が起こることを考えると、相続した地方の不動産をどうすべきか困っている方もいらっしゃるのではないでしょうか?
「空き家を売れば良いんでしょ?」と考え、実際に売却活動を経験された方も多くいらっしゃるかと思います。
しかし、1つの不動産屋さんがどんな不動産も扱う「なんでも屋さん」であることは稀で、低額な地方の空き家、農地、山林などを相続し、売却活動の為に地元の不動産屋を回ったけど、扱ってくれる不動産屋が無かったという経験をされた方も多くいらっしゃるかと思います。
それもそのはず、お医者さんが、内科、外科のように各々の専門分野があるように、不動産もそれぞれの専門分野があります。得意としている価格帯や、エリア、例えば再建築不可物件や市街化調整区域など、不動産の難易度などに応じて得意な不動産を探さなければならないのです。
空き家の売買を得意とする不動産屋の探し方
今まで、空き家を探すには次のいずれかの方法で探さなければなりませんでした。
しかし、このような探し方をしても既にご説明したように、不動産業者には専門分野があるため、地方にあるような不動産を取り扱ってくれる業者を探すのは簡単ではありません。
そこで便利なのが不動産SNSウチカツです。
ウチカツは業界初、利用者も不動産業者も無料で利用できる不動産マッチングサイトで、不動産業者も無料で利用できるため、様々な専門分野を持つ不動産業者が全国で登録しています。
そのため、例えば地方の再建築不可物件、市街化調整区域、傾斜地、農地、共有持分など、どんな物件でも無料かつ匿名で不動産の相談ができます。
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更に、今までは低額な不動産は、ポータルサイトに掲載するにも多額の広告費が必要なため掲載してもらうことも出来ませんでしたが、ウチカツなら不動産業者が無料でポータルサイトに物件掲載出来るので、売却依頼をしたけど広告されないという心配もありません。
空き家の事で困ったら、是非一度ウチカツの不動産相談や不動産査定機能を利用してみてください。
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著者プロフィール
株式会社ドリームプランニング 代表取締役 高橋樹人
法政大学工学部建築学科卒 2020年より同社代表に就任、ニッチな不動産でお馴染みURUHOMEを立ち上げ後、日本全国から不動産の悩みが寄せられる。不動産業界における高すぎる広告費の問題から、利用者と不動産業者のマッチングが適切に行われていない事を問題ととらえ、業界初の不動産業者も利用者も無料で利用できる不動産SNSウチカツ(UCIKATU)を2022年にリリースした。