葬儀場や火葬場は、私たちの生活に欠かせない重要な施設です。
その一方で、「死」を連想させて縁起が悪いと感じられたり、煙などのにおいが気になったりといった理由から、「近くに葬儀場や火葬場がある物件には住みたくない」と思う人も多くいます。
事実、葬儀場や火葬場が近くにある物件は購入希望者が少なく、価格も相場の5~20%程度安くなる傾向にあります。
しかしながら、物件の条件や売り出し方次第では、相場に近い価格で売却できる可能性もあるのです。
今回は、葬儀場や火葬場が近くにある物件を売却するためのポイントと、注意点について現役不動産社長が解説します。
売却のコツと売れないときの対策
葬儀場・斎場・火葬場とは?
葬儀場近くの不動産って売れにくい、葬儀場や斎場が近くにあると売れにくいという話は皆さまよく耳にされるのではないでしょうか?
そもそも、葬儀場や斎場、火葬場とはなんでしょうか。
まずはそれぞれの意味について解説してまいります。
葬儀場・斎場とは
葬儀場・斎場とは、お通夜やお葬式、告別式など葬儀全般の儀式を行う場所の事です。
「葬儀場」「斎場」「セレモニーホール」「葬儀会館」と呼ばれ、お通夜までご遺体を安置できるところや、会食できる施設があるところもあります。
また、斎場とは「火葬設備を有している火葬場を指す」ことも多くあります。
葬儀を行う施設は、市町村などが運営する公営の施設と、民間の会社が運営する施設があります。
火葬場とは
火葬場とは、「遺体を火葬する」施設の事を言い、斎場という名称が用いられることも多くあります。
昔は葬儀と火葬をする施設が同じ敷地内にあり、そこが「斎場」「斎苑」「葬斎場」と呼ばれておりましたが、今は火葬をする場所と葬儀をする場所がわけられる事も多くなりました。
現在、日本では火葬率は99.9%以上ですが、60%を超えたのは1960年代で、奥会津地方では1990年代後半まで土葬が残っていたと言われております。
住宅地で火葬場を建設する場合、住民の反対運動がおこる事が多く、都心部での新設は難しいのですが、もともと何もなかったところに火葬場を作り、住宅地が火葬場の近くまで広がっていたという事例も多くあります。
斎場って火葬場を指すこともあるんだね
今は〇〇火葬場という名称を利用する事も少ないから、〇〇斎場という施設で火葬が行われることも多いね
葬儀場・火葬場の建設について
火葬場は、用途地域とは違う規制に属する特殊建築物と言われ、都市計画で場所を定めた場合のみ建築できます。
また、火葬を行わない葬儀場は、集会場と同じく、第一種・二種低層住居専用地域、第一種中高層住居専用地域、田園住居地域以外では原則的に建築できます。
以下それぞれについてみていきましょう。
葬儀場建設が可能な用途地域
葬儀場については、建築基準法では集会場と同じ扱いで建築が出来ます。
その為、基本的に「第一種低層住居専用地域」「第二種低層住居専用地域」「第一種中高住居専用地域」「田園住居地域」以外の用途地域であれば、建築しようと思えば建築できます。
第一種低層・第二種低層・第一種中高層・田園住居 | 第二種中高層 | 第一種住居 | 第二種住居 | 準住居 | 近隣商業・商業 | 準住居 | 工業・工業専用 | |
葬儀場 | × | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
※第二種中高層:2階以下かつ床面積1,500㎡以下、なお、宿泊部分が旅館業法の適用を受ける場合には建築不可
※第一種住居:床面積 3,000㎡以下
※第二種住居・準住居:床面積10,000㎡以下
※工業・工業専用:床面積10,000㎡以下、なお、宿泊部分が旅館業法の適用を受ける場合には建築不可
ただ、このようにして無秩序に葬儀場などが建築されてしまうと、トラブルの元になりかねないため、各自治体で斎場設置に関して、近隣説明や事前協議をするように条例などで定められている事が多くあります。
火葬場は都市計画で敷地の位置が決定していないと新築できない
建築基準法51条では、「火葬場など都市計画においてその敷地の位置が決定しているものでなければ、新築・増築してはならない。(ただし、特定行政庁が都道府県都市計画審議会の議を経てその敷地の位置が都市計画上支障が無いと認めて許可したものはこの限りではない)」としています。
つまり、住民説明や都市計画審議会など、色々なプロセスを経て決めれれる都市計画での決定事項でないと、火葬場は建築できないという事になっております。
これは、自宅の家の近くに急に火葬場が出来るなど、無秩序な開発が行われると色々と問題が起こるからであり「と畜場」「汚物処理場」「ごみ焼却場」なども、こうした建築制限の対象となります。
葬儀場は集会場と同じような扱いで建てられるんだね
条例などで届け出が必要な事が多いけどね。だけど火葬場はかなりハードルが高いんだ
近年の火葬場は、火葬場という事が分かりにくい
昭和の火葬場というと、高い煙突象徴になっていましたが、1990年以降、煙突のある火葬場は少なくなりました。
これは、排煙の透明化と臭気の除去技術が高くなったことに加え、景観的に煙突を有した火葬場が近隣住民の反対を受けやすいという事があげられます。
基本的に火葬場の建築は都市計画のプロセスを経なければならず、近隣との協議も必要です。
そのため、今は明らかな火葬場を建築するのは難しく、ぱっと見た感じだと火葬場と分からない施設が多くなりました。
とはいえ、近くに火葬場が建設されるとなると困りますよね。
もし近くで火葬場や葬儀場が建設されるという事で売却をお考えであれば、不動産SNSウチカツで不動産査定や不動産相談をしてみてはいかがでしょう。
葬儀場・火葬場近くの不動産を高く売るには
葬儀場や火葬場の近くの不動産というと敬遠されがちですが、意外と普通の金額で売却できることもあります。
葬儀場・火葬場近くの不動産は、まず相場で売出す
近くに葬儀場や火葬場があるからといって最初から価格を下げる事はあまりお勧めできません。
まずは一般的な相場価格で売り出してみましょう。
特に葬儀場は、老若男女問わず足を運びやすいように、交通アクセスのいい場所に作られるのが一般的です。
そうした場所には、スーパーやコンビニといった生活するために必要なものが揃っていることが多いため、意外と生活環境のよさが評価される可能性も高くあります。
それに、最近の葬儀場や火葬場は、それと分かりにくい施設も多く、葬儀場や火葬場が近くにあっても気にしないという人もいます。
最初から「売れないかもしれない」と弱気な価格設定をすると、あとで相場まで価格を上げて売却することが難しくなってしまいます。
すぐに価格を下げず、まずは普通の家と同じ水準で売りに出して様子を見てみましょう。
売れなかったら価格を下げる
まずは相場で売りに出してみるのがおすすめですが、条件によってはなかなか売れないというケースもあります。
一定期間売りに出しても買主が決定しないようであれば、少しずつ価格を下げていきましょう。
ここでの注意点は、一気に価格を下げすぎないこと。
購入希望者から値下げ交渉をされる場合もあるため、価格を下げすぎるとそのあとの交渉で不利になってしまいます。
不動産会社と相談しながら、問い合わせ状況を見つつ価格を調整していくといいでしょう。
葬儀場・火葬場が近くにある物件などの注意点
葬儀場や火葬場、それに類する施設が近くにあることを気にしない人もいれば、「最初に知っていたら絶対に購入しない」という人がいます。
そのため購入希望者や不動産会社には、あらかじめ葬儀場・火葬場、それに類する施設の存在を知っていたら必ず伝えるようにしましょう。
売主には、物件に何らかの瑕疵(欠点や欠陥)がある場合に、買主に対してあらかじめ告知しなければいけないという義務があります。
葬儀場や火葬場は「近くに住みたくない」と思う人が多いことから、「環境的瑕疵」に該当します。
不動産業者でも近隣に葬儀場・火葬場やそれ以外に告知しておくべき施設が無いかを調べますが、意外と「棺桶を作っている工場がある」「正式な葬儀屋ではないが、葬儀の取次を行っている施設がある」という事も、ごくまれにあります。
そういったことを知っていても告知せずに売却してしまうと、契約解除される可能性もあります。
あらかじめ見えない欠点や欠陥(瑕疵)を買主に対してあらかじめ伝えておくことで、引き渡し後のトラブルを回避し、買主だけでなく売主様の立場も守ることが可能です。
不動産を売りに出す際に懸念点がある場合は、必ず購入希望者や仲介する不動産会社に伝えておくようにしましょう。
葬儀場・火葬場の近くの物件を売りたいとき、売れないとき
葬儀場や火葬場が近くにある物件は、必ずしも売れないということはなく、物件の条件や売り出し方次第では通常の方法でも売却できます。
しかしながら、価格を下げてもなかなか売れず、不要な物件を長期的に保有しなくてはいけなくなる人がいるのも事実です。
買取してもらうというのも一つの方法
早く手放したい場合は、不動産会社に直接買い取ってもらうという方法もあります。買主を探さなくていいため、1~2週間程度の短期間で売却でき、不動産会社に支払う仲介手数料も発生しません。
買取を専門とする不動産会社の中には、周辺の環境や施設の影響で売れにくい不動産の買取を得意とする業者も多数あります。
なかなか買い手が見つからず困った場合や、そうした業者も上手に活用するようにしましょう。
ウチカツなら色々な会社に買取査定を依頼出来る
不動産SNSウチカツでは、葬儀場・火葬場の近くの不動産や、葬儀場や火葬場として利用されていた不動産でも、不動産の買い取り専門業者の買取額を比較検討する事が可能です。
一般的な不動産サイトの場合、売出価格の査定しか出来ませんが、不動産SNSウチカツは、不動産業者から広告費を頂いていないため、様々な不動産買取業者が利用登録しています。
無料で不動産買取査定が出来るのはウチカツだけですので、売却に困っている不動産があれば買取査定や、不動産相談してみましょう。
やっぱり不動産売却は買取査定も出来るウチカツがベストだね。
他の一括査定サイトと違って、買取業者が沢山登録しているから、買取価格の査定も出来るんだよ
著者プロフィール
株式会社ドリームプランニング 代表取締役 高橋樹人
法政大学工学部建築学科卒 2020年より同社代表に就任、ニッチな不動産でお馴染みURUHOMEを立ち上げ後、日本全国から不動産の悩みが寄せられる。不動産業界における高すぎる広告費の問題から、利用者と不動産業者のマッチングが適切に行われていない事を問題ととらえ、業界初の不動産業者も利用者も無料で利用できる不動産SNSウチカツ(UCIKATU)を2022年にリリースした。