「傾きがある家」の売却価格相場は?

傾きがある家の売却
傾きがある家の売却

建物の老朽化や地盤の問題で傾きのある家は、売却時に苦労したり、思ったような価格で売れなかったりといったケースが目立ちます。
傾きのある家を売却する際、買主に対して家の傾きの状態を正確に伝え、補修工事にかかる費用についても話し合っておく必要があります。
こうした手順を正しく踏まないと、売買したとしても契約解除に繋がったり、場合によっては売主側が重大な責任を負わなければならなくなったりする可能性もあります。
そこで、傾きのある家などの売買を多数手がけている不動産業者の社長である私が、売却する際の注意点、売れない場合の対策について解説します。

著者プロフィール 


ドリームプランニング 高橋

株式会社ドリームプランニング 代表取締役 高橋樹人

法政大学工学部建築学科卒 2020年より同社代表に就任、ニッチな不動産でお馴染みURUHOMEを立ち上げ後、日本全国から不動産の悩みが寄せられる。不動産業界における高すぎる広告費の問題から、利用者と不動産業者のマッチングが適切に行われていない事を問題ととらえ、業界初の不動産業者も利用者も無料で利用できる不動産SNSウチカツ(UCIKATU)を2022年にリリースした。

「傾いた家」売却時のポイントと売れない場合の対策

傾きのある家とは

ひとことに「傾きのある家」といっても、気が付くか気が付かないかはその人次第ですが、国交省に定めたガイドラインで「傾きのある家」としての基準を定めております。
この基準をクリアしていても実際に傾いている家はありますが、基準をクリアしているかしていないかで価格が変わってきます。

そこで、どの程度傾いていると売却価格に影響があるかご説明してまいります。

ガイドラインは正確には「住宅の品質確保の促進等に関する法律(平成十一年法律第八十一号)第七十条の規定に基づく、住宅紛争処理の参考となるべき技術的基準」といいます。

「傾いた家」の基準

中古住宅を売却する場合、「既存住宅状況調査」(ホームインスペクション)と呼ばれる建物調査が行われることが多くなります。
「既存住宅状況調査」は、竣工から年月が経過している建物について、”劣化している部分はないか””耐震性に影響を及ぼす部分はないか”を調べる調査です。
建物の購入希望者に対して現状を正確に伝え、購入するかどうかの判断材料を提供するために活用されます。
この調査は任意ですが、調査をしているかしていないかによって、買主さんの安心感も変わってきます。

ホームインスペクション
ホームインスペクション

既存住宅状況調査には「柱」と「床」が調査項目として含まれており、これらが家の傾きに関連しています。
調査の結果「瑕疵がある可能性が高い」と報告されるのは、「柱」または「床」のいずれかに6/1000以上の傾きがある場合です。

6/1000以上の傾きが見られる住宅は、品質の高い住宅確保を促進する「品確法」において「建物の構造耐久上重要な部分に瑕疵が生じる可能性が高い」として判定されます。
つまり、6/1000以上の傾きのある家は、品質に問題のある住宅として扱われるため、相場よりも低い価格で取引されることになります。

レベル住宅の種類(木造住宅、鉄骨造住宅、鉄筋コンクリート造住宅又は鉄骨鉄筋コンクリート造住宅)構造耐力上主要な部分に瑕疵が存する可能性
13/1000未満の勾配(凹凸の少ない仕上げによる壁又は柱の表面と、その面と垂直な鉛直面との交差する線(2m程度以上の長さのものに限る。)の鉛直線に対する角度をいう。以下この表において同じ。)の傾斜低い
23/1000以上6/1000未満の勾配の傾斜一定程度存する
36/1000以上の勾配の傾斜高い
壁、または柱の傾きと、構造耐力上主要な部分に瑕疵が存する可能性

傾きがある家の危険性と影響

傾きがある家に住んでいると、建物の問題だけでなく、健康被害も生じてきます。
実際は感覚的には分からなくても、「なんだか気持ち悪い」「変なところに力がかかる」という事で調べてみたら傾きがあったということもあります。
認識していなくても傾きが存在する事はありますし、傾きがある事で2次被害が起こり、トラブルの原因になることもあるので、売却する際はきちんと建物の調査をするようにしましょう!

体調が悪くなることも
傾いた家に住むと体調が悪くなることも

建物の傾きによる建物本体への影響

  • 戸や扉に隙間があり、気密性や防犯上の問題がある
  • ドア、網戸、雨戸などが開きにくい
  • 外壁や基礎、屋根などにひびが入り、雨漏りが生じやすくなる
傾いた家は外壁などにひびが入り、雨漏りの原因となります
傾いた家は外壁などにひびが入り、雨漏りの原因となります

建物の傾きによる健康への影響

  • 平衡感覚がおかしくなり、眩暈や頭痛などが生じる
  • 食欲がなくなる、睡眠障害などが起こる
傾いた家に住むと気分が悪くなります
傾いた家に住むと気分が悪くなります

傾いた家の売却相場は?

傾きのある家の売却価格は前述したように、建物本体への影響や、健康への影響があるため相場より安くなる傾向にあります。

欠陥のある住宅を好んで購入する人はいません。
傾いた状態の家を購入した場合でも、入居前に自身で工事を手配する必要があるだけでなく、工事をしても再度傾くリスクも否定できないという理由から、買主側も購入に慎重になります。

傾いた家の売却価格相場

傾いた家を売却する際、買主が引き渡し後に傾きを直す工事を行うことを想定して
「傾きを直す金額+将来傾くリスクを考量した金額」
を周辺の一般的な相場から差し引いた価格で成約
されます。

傾いた家の相場
傾いた家の相場

床のみが傾いている場合

売却価格から差し引く工事費用や、将来傾くリスクを考慮した金額は、家の傾きの原因や程度によっても異なります。
柱や外壁は垂直な状態で床のみ傾いている(ゆがんでいる)場合は、床のみの工事費用を差し引くことになり、相場より100万円程度安くなります。

建物全体で5㎝ほどの傾きの場合(6/1000以下の傾き)

建物全体で5㎝ほどの傾きであれば、簡易的な工法でも傾きは直せるので、傾きを直す費用は100万円~500万円位で直すことが出来ます。
ただ、一度傾いた家は軟弱地盤の上に建築されている可能性があり、直しても再度傾くこともありえます。
ですので、再度傾くことも考量した(傾きを直す費用×1.5)を引いた金額、つまり一般的なお家より150~750万円位安くなることがあります。
さらに、建物全体で5㎝ほど傾いている場合、基礎コンクリートや、外壁にひびが入っている可能性もあり、ひびが入っていた場合、これらの修復費用分さらに安くなります。

建物全体で5㎝を超える大きな傾きの場合(6/1000以上の傾き)

建物全体で5mを超える大きな傾きがあった場合でも、ジャッキアップなどの簡易的な工法だと100万円ほどで直せることもありますが、再度傾く可能性も高いため、他の工法で傾きを直すと200万円~600万円ほどのかなりの傾き修復費用が必要になります。
ですので、再度傾くことも考量した(傾きを直す費用×1.5)を引いた金額、つまり一般的なお家より300~900万円位安くなることがあります。

また、建物全体で5㎝以上傾いていた場合、基礎コンクリートや、外壁に重大なひびだけでなく、雨漏りや排水管が逆勾配になっていたりなど、修復に300万円以上かかる可能性もあります。
このような場合、建物の傾きを直すより、古家付の土地として売却した方が高く売れます。

建物の傾きは雨漏りの原因にもなりえます
建物の傾きは雨漏りの原因にもなりえます

傾いた家を売却する事で、契約不適合責任を問われる可能性もあります

買主に対して、家に傾きがあることを知らせない状態で契約締結・引渡しを行い、後に傾きによる住宅の欠陥が判明した場合、契約を解除されたり損害賠償を請求されたりすることがあります。
これを「契約不適合責任(瑕疵担保責任)」と呼び、物件引き渡し後に想定していた目的(住居の場合は居住すること)を十分に達成できないことが判明した場合に、売主は買主に対して責任を負う必要があるのです。

傾きのある家を売却すると契約不適合責任を問われることもあります
傾きのある家を売却すると契約不適合責任を問われることもあります

既存住宅状況調査での調査ポイントは柱と床に限定されますが、柱や床に傾きがあることで、壁と床の間に隙間が生じたり、建具が開閉しづらくなったりする可能性もあるという点に注意が必要です。
また、こうした不具合の発生原因が家の傾きである場合は、既存住宅状況調査によって「建物に傾斜有り」と判定されなくても、瑕疵に該当する場合もあるということを覚えておきましょう。

ちなみに、売却査定をする場合は、ウチカツがおススメです。
ウチカツは「傾きのある家」など、売却の難しい不動産を専門とする業者が多数登録していて、不動産の「売出し価格査定」「不動産買取査定」「不動産相談」が無料で出来ます

傾いた家を売却する方法

傾きのある家を売却するには、以下の3つの方法があります。

  • 傾きのあるまま売却する
  • 傾きを直してから売却する
  • 更地にしてから売却する

1つずつ解説していきます。

傾きのあるまま売却する

買主側で傾きの改善工事を行わずに現状のままで売却する場合は、周辺の相場から「買主側で実施する工事費用」と「将来傾くリスクを考慮した金額」を差し引いた価格が成約価格となります。

この時に可能であれば施工会社に依頼して、傾きを直すのにはどれくらいの費用がかかるか見積もりを取りましょう。
実際の費用に近い金額を提示できるため、購入希望者も納得してくれる可能性が高まります。

傾きを直さずに売却する場合は、傾き以外の不具合もできる限り調査・把握し、買主に対してすべて伝えておくことが必要です。
万が一事前に伝えていない瑕疵が引き渡し後に発覚した場合、契約不適合により売主側が大きく損をする可能性があります。
特に傾きのある家の場合、傾きそのものだけでなく、傾きからくる他の箇所の不具合(雨漏りや給排水管の故障など)も瑕疵として扱われるため注意が必要です。

傾きのある家を売却する際はきちんと調査しましょう
傾きのある家を売却する際はきちんと調査しましょう

傾きを直してから売却する

自分で工事を手配する必要のある物件よりも、すでに修理されている物件のほうが、売買契約につながる可能性が高まります。

ただし、傾きを直してから売却に出す場合は、工事後に「既存住宅状況調査」を行うことをおすすめします。
一度傾きを直しても、地震やその他の原因により再び家が傾く可能性も否定できないため、少なくとも「売買契約締結時には」瑕疵がなかったことを証明しておくことが大切です。
さらに売主側で行った補修の履歴もあわせて告知することで、買主からの信頼を得やすくなります。

傾きの度合いによっては修復するよりも、古家付きの土地として売却した方が安くなることもあるので、修復して売却するのと、土地として売却するのとどちらが費用対効果が高いか比べてみて売却方法を考えましょう。

傾きの度合いによっては、古屋付土地として売却した方が良いこともあります
傾きの度合いによっては、古屋付土地として売却した方が良いこともあります

傾きを修復する費用

施工方法リフォーム費用工期施工方法対応する傾き・地盤の状態
硬質ウレタン注入工法200〜600万円1〜3週間ベタ基礎の下に穴を開け「硬質ウレタン樹脂系の薬液」を注入■傾き5cm程度まで
■安定した地盤で施工可
グラウト注入工法230〜600万円1〜2週間ベタ基礎の下に「グラウト材(セメント系の薬液)」■傾き5cm程度まで
■軟弱な地盤でもある程度は可
プッシュアップ工法100〜400万円10日〜3週間基礎コンクリートと土台を切り離し、ジャッキで建物を持ち上げる■傾き10cm程度
■安定した地盤で施工可
耐圧版工法200〜700万円10日〜5週間建物の基礎の下に鉄板を設け、油圧ジャッキを設置して、家を持ち上げる■大きな傾きにも対応
■安定した地盤で施工可
鋼管圧入工法300〜600万円3週間〜2ヶ月建物の基礎下を掘削、地盤の支持層まで鋼管杭を圧入・打ち込み■大きな傾きにも対応
■地盤沈下の修正も可能
建物の傾きを直す費用

更地にしてから売る

家の傾きがひどい場合で、古屋付土地で売っても買い手が付かない場合、家を解体して土地のみを売却する方法も検討する必要があります。

ただし、家を解体して更地になると、土地にかかる固定資産税額が大幅にアップしてしまう可能性があるため注意が必要になります。
毎年1月1日の時点で居住用の建物が建っている場合、その土地にかかる固定資産税が6分の1になるという優遇措置がありますが、建物を解体するタイミングによっては1月1日の時点で建物がない状態になってしまい、優遇措置が受けられなくなってしまうのです。
家を解体して更地にする場合は、売却成立までのスケジュール管理が大切という点を押さえておきましょう。

解体して売却した方が良い場合もあります
解体して売却した方が良い場合もあります

傾いた家を売却する良い方法は?

傾いた家を売却する方法や、相場については大体分かりました。
ただ、どの不動産業者に売却をお任せしてよいか悩むところです。
どんな業者に任せたら良いか悩んだら、不動産SNSウチカツを利用してみてはいかがでしょう?
不動産SNSウチカツは、不動産の「売出し価格査定」が出来るだけではなく、直接不動産業者が買い取ってくれる「買取価格査定」、匿名で不動産の相談ができる「不動産相談」が全て無料で出来るという業界初のサービスです。
各サービスについて簡単にご説明したします。

ウチカツを利用して買取業者に売却

傾きを直して売却するような予算が無い場合や、現況で売却するにしても傾きが大きすぎて修復に多額の費用を要する場合、買取を専門とする不動産会社に買い取ってもらうという方法があります。

買取専門の不動産会社は、買い取った瑕疵付きの住宅を「補修・リフォームし、商品価値を高めて再度販売する」か、「建物を解体し新築一戸建てを建築して販売する」というビジネスモデルで事業を行っています。
そのため傾きなどの瑕疵がある建物であっても、想像以上の高値で買い取ってもらえる可能性もあります。

一般的な不動産一括査定サイトでは、不動産仲介業者が査定を行うため、成約時に仲介手数料がかかりますが、ウチカツの買取査定であれば不動産買取業者が直接査定するために、仲介手数料が不要です。
それに、買取業者が買い取る場合、契約不適合責任を負うこともないので、引き渡し後にトラブルになることもありません。

不動産買取業者が直接買取査定をするのは、ウチカツを除きほとんどありません。
特にウチカツの場合、傾きのある物件など、訳あり不動産を得意とする不動産買取業者が多数登録しているのもポイントです。

ウチカツは不動産業者が直接買取査定をします
ウチカツは不動産業者が直接買取査定をします

ウチカツを利用して売出し価格の査定

ウチカツを利用すると、一括査定サイトのように売り出し価格の査定をすることも出来ます。
ただ、普通の一括査定サイトと違うのは、傾きのある不動産など、売却が難しい不動産を得意とする不動産業者が沢山利用している点です。

不動産を売却する際、いかに高く売却するかに意識が向きがちです。
しかし、傾きのある家に関しては、売却後に瑕疵が発見されることによりトラブルに発展したり、補修工事や値引きを行っても思うように売れなかったりと、売却前後も含めて苦労するケースが少なくありません。
売却を検討している家の状態を把握し、早く売るためには、売却が難しい不動産を専門にしている複数の不動産業者に査定をお願いしてアドバイスをもらう事をお勧めします。

売却が難しい不動産専門業者に査定可能
売却が難しい不動産専門業者に査定可能

ウチカツを利用して「傾きのある家」の相談が可能

そもそも、売却するかも決まっておらず「傾きを直して住む」「賃貸する」「現在のまま売却するか」など、どうしようか迷っている方には、ウチカツの不動産相談がおススメです。

不動産相談は、匿名で利用できるので、そもそも売りに出すべきかどうするか悩んでいる場合でも、まずは相談から始めることが可能です。
前述しているように、ウチカツは売却の難しい不動産を専門とする不動産業者が多数登録しているため、傾きのある家を活用したり、売却するためのアドバイスをプロがしてくれます。

複数の回答の中から、一番しっくりときた不動産業者さんに直接相談もできるので、どうするか悩んでいる方は一度利用してみましょう。

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